世界樹の迷宮。
国産RPGの大家であるATLUSが制作した、ダンジョンハックRPGへの原点回帰を目指したコンシューマRPGです。
2007年1月にシリーズ第一作が発売されて以来、オールドゲーマー層を中心に人気を博すと共に、新規のRPGファンも開拓し、今やコンシューマゲームにおいて日本を代表するRPGシリーズ作品の一角です。もはや名作と呼んで差し支えないシリーズと言えましょう。
その人気の秘訣は、やはり近年の国産RPGではもはや珍しくなってしまった、冒険そのものの面白さと緊張感にあるのだと思います。
視覚的な演出や複雑なストーリーよりも、シンプルに、ストイックに冒険の楽しみを味わわせてくれる、質実剛健とした骨太なコンセプト。目の前に現れた敵が必ずしも勝てる相手とは限らない緊張感。だからこそ知恵を凝らす面白さがあり、計画的にキャラクターを育てる意義と楽しみがあり、達成の喜びがある。
『世界樹の迷宮』においては、実りある苦難とも言うべきそれらが、多くのプレイヤーを虜にしてきたのでしょう。
そもそも考えてみれば、TRPGという遊びも、世界初のTRPGであるDangeons & Dragonsの時代からは大きく(特に日本では)様変わりしてきました。
漫画やアニメにおけるストーリー作りの技法にも通じる所があるロールプレイ評価制度を取り入れたシステムや、プレイヤーキャラクターたちがゲームシステム化された主役補正を当然のように持っているシステムが、昨今では多数を占めているように思います。
もちろん、それはそれで面白いものです。
しかし、『格好良くロールプレイしていれば、自然と有利になって、だいたい必然的に強敵や苦難に勝てる』というようなシステムは、役割演技のゲームとしては完成度が高いですが、果たして『冒険』であるのか? という問いには疑問を抱かざるを得ません。
もともと『冒険』とは、そしてTRPGにおけるセッションとは――少なくともDangeons & Dragonsの時代には――プレイヤーキャラクターたちが主人公であるからといって必ずしも目の前の冒険が成功裏に終わる保証などどこにもなく、だからこそプレイヤーたちは知恵を凝らし、全力を尽くしたものであったはずです。
誤解の無いように言っておきますと、『役割演技』としての色が濃いTRPGよりも『冒険』としての色が濃いTRPGの方が優れている…などという事を主張するつもりはありません。
むしろ、近年に発売されたTRPGシステムを見れば、どちらかと言えば前者の方が主流なのでしょう。
しかし、だからこそ危険と不確実性に満ちた『冒険』としてのTRPGがたまにはあってもいいはずである、と思います。
『世界樹の迷宮』の名を借りて、その想いをここに形にします。
さて、前置きが長くなりました。
本作は、その名も示すように、迷宮に主眼を置いた――すなわちダンジョンハックに特化したTRPGシステムです。
プレイヤーキャラクターたちは、おのおのの目的があって樹海や洞窟といった迷宮へ潜り、怪物を倒し、迷宮の奥に隠された何かを手に入れるために行動します。
迷宮に潜る目的は、ひょっとしたら森の奥で薬草や鉱石を採ってくる程度の事かもしれませんし、あるいは天変地異の原因が潜む巨大な迷宮の最深部に到達して真実を知る事かもしれません。
いずれにしても確実なのは、その道のりは決して平坦ではなく、知恵と力を総動員して臨むべき危険が常に隣り合わせである事です。
だからこそ、真に知恵と勇気、そして仲間との絆が試される冒険がそこにはあるのです。
ようこそ、『世界樹の迷宮』へ。
そして、あなたの冒険の道に、実りある苦難が訪れんことを。
制作:◆SQ.iJMf4FY